持ち帰り仕事と労働時間

最近の働き方改革の流れの中で、残業時間削減の為、定時退社を促される場合もあるでしょう。その様な時に仕事が終わらず自宅に持ち帰った場合の労働時間の扱いはどうなるのでしょうか?そもそも労働時間とは使用者の指揮命令下にある時間だとされています。労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価する事ができるか否かにより客観的に定まるものとされています。

上司の命令はどうか

残業は上司の直接的な命令だけでなく、具体的に指示されていた仕事が時間内にはできない程度の量である場合、その日の業務の性質上残業させざるを得ないような状況である場合、使用者の「暗黙の指示」がされていた残業とされます。

就業規則等の規定の社内ルールで上司の承認が無ければ残業を認めないと決めていたとしても、個別かつ具体的に残業を中止させるような明確な指示、命令が必要であり、終業時刻を過ぎたら強制的に退社させる等も必要でしょう。

持ち帰り仕事は残業になるか

会社側が一定の時刻に強制退社させるとなると、労働者はその日に処理するべき仕事ができなくなった場合、やむを得ず帰宅後に持ち帰り残業をするかもしれません。

これについて労働時間となるのかどうかという問題があります。使用者の指揮命令下にあるかと言うと難しい判断です。上司から自宅に持ち帰ってでも仕事を終わらせるよう指示された時や暗黙でもノルマをこなすよう指示されていた場合は自宅でも労働時間とみなされる可能性はあります。

しかし重要な書類や秘密データ等を社外に持ち出す事にもなります。上司が容認、黙認する事は情報漏えいリスクも伴うので認める事がどの位あるのでしょうか。労働者が自分で自主的に持ち帰りした時は労働時間ではとみなされます。

長時間労働を抑えると言って強制退社させるなら、このような事態を招かないように、持ち帰り仕事を禁止する場合は仕事量も考えた上でルール化が必要でしょう。

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持ち帰り残業とは?

2016年3月に行われたみずほ情報総研株式会社の調査によると、持ち帰り仕事がある者の割合は、正社員全体では 34.5%、非正社員全体では 17.4%でした。さらにその頻度として、持ち帰り仕事が「ほぼ毎日」ある者の割合が、正社員全体では 12.4%、非正社員全体でも10.2%にのぼりました。

近年、インターネットの普及に伴い、インターネットを介していつでもどこでも仕事をすることが可能となったため「持ち帰り残業」の敷居が低くなりました。今後も増加が続きそうな持ち帰り残業について検証していきます。

 

給料は発生するのか?

持ち帰り残業には2パターンあります。1つは、労働時間内に終えることができなかった業務を労働者個人が自主的に持ち帰り、続きを自宅などで行う場合です。もう1つは、会社側が「明日までに○○を仕上げてくれ」などといった指示をだした場合です。

持ち帰り残業に給料が発生するかどうかは、労働時間とみなされるかどうかによって決められます。労働時間については労働基準法でも明確な規定はありませんが、一般的に労働時間とは、「労働者が使用者または監督者の指揮命令下に置かれ、労働に服する時間」とされています。

前者の労働者が自主的に持ち帰り残業を行う場合には、使用者の指揮監督下にあるわけではないため労働時間とはみなされず、賃金の支払い義務は発生しません。一方、後者の会社側が持ち帰り残業を指示した場合や、黙示の業務命令をだした場合には、たとえ自宅で作業をする場合でも使用者の

 

指揮下にある労働時間とみなされ、賃金支払いの必要性が発生します。

 

黙示の業務命令とは、会社側が客観的に労働時間内に終わりようのない業務量を「明日までに仕上げること。」などと期限を定めて要求することをいいます。残業をしないと終わらない業務量を与えられ、会社内での残業を禁止された場合、従業員は自宅など場所を変えて行うしかありません。

指示や強要がなくとも、持ち帰り残業をしなくては指示された業務を完結することができないことが明らかに判断できる場合には「黙示の業務命令」とみなされ、賃金支払いの必要性が高まります。

 

「働き方改革」による36協定の見直し

現在、安部内閣が取り組む「働き方改革」によって、長時間労働の是正に向けた取り組みが広がっています。特に、長時間労働の温床となっていた「36協定」の見直しが進められており、これまでは無制限にできていた長時間労働に上限を定める案が決定されました。

専門家は「一見、労働者を保護している働き方改革によって、より一層残業時間の縮小が迫られることにより、労働時間にカウントしないサービス残業や、持ち帰り残業が増えていくことが予想される」と問題提起しています。

 

BIZHINT HRより