使用者賠償責任保険の契約者が増えている

使用者賠償責任保険は労災認定された事案について企業の安全配慮義務等を問われ法律上の損害賠償責任を負った場合に備えるものです。

近年はうつ病等による労災認定件数の増加、賠償額の高額化を背景に大手損害保険会社グループでも2015年の契約件数は前年度比率1、5倍となっています。

この傾向は今後も続くと予想されます。

今後重要視される使用者責任保険

労働基準法では業務災害で従業員が病気やけがを負った場合、会社は必要な補償を行わなくてはなりません。

その為労災保険に加入し、従業員が業務災害を負った補償は労災保険から給付を受けます。労災保険から給付される事で会社は従業員に対する補償義務を免れる事ができます。

しかし損賠償責任を負った時例えば死亡事故等の場合は遺族が会社に対し損害賠償請求を求める事があります。「使用者賠償責任保険」は労災保険給付を上回る補償の提供や和解金の支払いの為に利用する事ができます。ですから労災上乗せ保険と呼ぶこともあります。

使用者賠償責任保険とは転ばぬ先の杖的役割と言えるでしょう。

労災保険から従業員に保険給付がされた場合、治療費、休業補償、遺族補償がありますが、慰謝料などは給付されません。

労災保険から労働基準法に定められた金額が給付されたとしても会社の安全配慮義務違反が問われると労災保険とは別に民事上の損害賠償を求められることがあり、最近は損害賠償額も高額傾向にあり、1億円を超える事もすくなくありません。

リスクを考え検討を

中小企業の場合、多額の賠償金を支払う事は経営の危機を伴う事も想定されます。

業務災害はどの企業にも起こりうる危険性をはらんでいるとも言えます。

但し、保険に加入すればリスクヘッジにはなりますが保険料がかかります。保険料は定額のものから業種、雇用形態、企業規模で違っている保険もあります。

これまでの労働災害の発生状況等も考え、費用と効果を勘案して加入を検討することが良いでしょう。

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独立行政法人労働政策研究・研修機構より

使用者に対する損害賠償請求は、多くの場合、使用者の雇用契約上の義務違反、つまり債務不履行責任(民法415条)を根拠として提起されます。

債務不履行責任の根拠となる義務については、最高裁の判決(最三小判昭和50・2・25・陸上自衛隊事件)によって、使用者は労働者に対して「安全配慮義務」、すなわち労働者の生命・身体等を危険から保護するように配慮すべき信義則上の義務を負うという考え方が確立されています。

つまり、使用者は、労働者が安全な環境で就労できるよう配慮することを、雇用契約の当事者としての信義に従った対応として義務付けられているのです。使用者の安全配慮義務は、平成19年に制定された労働契約法により、立法も明らかにされています(労働契約法5条)。

労働災害を巡っては、使用者がこの安全配慮義務の履行を怠ったために事故が発生したとして、損害賠償を請求する訴訟が提起されることが多くなっています。

例えば、近年問題となっているいわゆる過労死や過労自殺についても、遺族が労働基準監督署長に労災認定の申請をする、と同時に、会社の責任を損害賠償請求訴訟で追及するということが珍しくありません。

この場合にも、労働者を過労死や自殺に追い込んだ会社の責任を、安全配慮義務違反として問うこととなります。安全配慮義務を根拠とした民事上の損害賠償請求では、労働災害によって生じた損害の内容や程度に即して賠償額が認定されますし、精神的損害に対する慰謝料も認められます。

以下略