土地取引では要源泉徴収の場合も

土地等を購入して代金を支払う時、譲渡者が非居住者や外国法人の場合は、譲渡代金支払者は、10.21%の税率により計算した額の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。ただし、個人が自己又はその親族の居住の用に供するために土地等を購入した場合であって、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合には、その個人は源泉徴収する必要がありません。

源泉徴収税額の納付

土地等の譲渡の対価から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、売主の非居住者等に対して買主が国内において支払った場合には、原則として支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。なお、非居住者等に対するその支払いが国外でなされる場合の納期限は、支払った月の翌月末日となります。

源泉徴収の必要があるか迷った事案

源泉徴収義務があるか否かを争った事例があります。売主は、日本国籍をもち、住民票も印鑑登録証もあり、後期高齢者医療制度被保険者証の交付を受け、介護保険被保険者証の交付も受けて、介護保険料を納付し、社会保険料控除をしている所得税の確定申告を毎年しており、確定申告での不動産所得の起因となる駐車場貸付け収入を得ていた際に源泉徴収されていた事績がなく、また買主は売主に対し、代金支払先が米国なので、「国内居住者でなければ課税関係が変わりますから」と前置きして売主本人に対し、非居住者か否かの質問をし、国内居住者である旨の回答を得ていたものでした。ただし、この売主は、米国において、米国籍及び社会保障番号を取得しており、米国発給のパスポートを持っていました。

国税局も情報を集めて判断

この事案で、国税局は、法務省東京入国管理局や米国内国歳入庁に対する照会等の調査をし、売主が非居住者であると判定をして、買主に源泉徴収もれの告知処分をしてきました。それに対し、買主は、これ以上の注意義務を要求されるのは、あまりにも過酷として訴訟に及んだものの、裁判所は、代金支払先が米国であり、「国内居住者」か否かの質問に際しその意味を説明しておらず、注意義務不十分として、納税者敗訴にしています。厳格過ぎの印象ではありますが、要注意です。

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概要
東京地方裁判所平成26年(行ウ)第114号所得税納税告知処分取消請求事件(棄却) (控訴) 国側当事者・国(新宿税務署長) 平成28年5月19日判決

判  示  事  項

1 本件は、株式会社である原告が、乙との間において、土地及び建物に係る売買契約を締結し、本件不動産の売買代金7億6000万円並びに固定資産税及び都市計画税相当額の精算金215万9273円の合計額である7億6215万9273円を乙に支払ったところ、処分行政庁から、乙が所得税法2条1項5号にいう「非居住者」に該当し、原告は同法212条1項に基づく源泉徴収義務を負うとして、源泉所得税の納税告知処分を受けたことに対し、乙は所得税法上の「非居住者」には該当せず、仮に該当するとしても、原告は源泉徴収義務を負わない旨主張して、告知処分の取消しを求める事案である。

2 乙は、米国において、米国籍及び社会保障番号を取得しており、日本国内には米国発給の旅券を用いて入国している。また、乙は、平成10年以降、多くて年4回日本に入国しているものの、その滞在期間は、1年の半分にも満たない。そして、乙が、平成12年11月に米国住居を購入し、平成13年以降は米国住居において長男と同居して生活していたことに鑑みれば、本件支払日の当時において、乙の生活の本拠は、米国住居にあったというべきであり、日本国内に「住所」を有していなかったというべきである。

3 乙は、日本国内に滞在している間は、本件建物を生活の場所としているものの、本件支払日以前の1年間において本邦に滞在した日数は156日であるから、支払日時点において日本国内に1年以上居所を有していなかったことは明らかである。

4 以上のとおり、乙は、本件支払日において、①日本国内に住所を有しておらず、②支払日まで引き続いて1年以上日本国内に居所を有していなかったのであるから、所得税法上の「非居住者」であったというべきである。

5 原告は、乙の非居住者性を判定するに当たり、乙の米国における家族関係を確認することが必要であったというべきである。原告の担当者は、乙が不動産を売却した後の居住関係についても具体的に確認することをしていないところ、売買契約書の内容によれば、原告及び乙は、不動産を売却した後においても、相互に協議することがあり得ることを認識していたというべきであって、原告の担当者が、乙の不動産売却後における居住関係等を確認しないこと自体、本件売買契約に基づく注意義務を尽くしていなかったことをうかがわせる事情である。

6 乙は、本件支払日において、所得税法上の「非居住者」であるから、原告は、乙に対して国内源泉所得(譲渡対価)を支払うに際し、源泉徴収義務を負っていたというべきである。

7 本件告知処分が租税公平主義及び信義則(禁反言の原則)に違反したものであるということはできない。

8 本件譲渡対価に係る原告の納付すべき源泉所得税額は、本件告知処分における平成20年3月分の納付すべき税額と同額であるから、告知処分は適法である。

判決年月日 H28-05-19  (H28-12-01)

国税庁訴資 Z266-12856 (Z266-12942)

 

東京高等裁判所平成28年(行コ)第219号所得税納税告知処分取消請求控訴事件(棄 却)(確定) 国側当事者・国(処分行政庁 新宿税務署長) 平成28年12月1日判決【

判決年月日 H28-12-01 (H28-05-19)

国税庁訴資 Z266-12942(Z266-12856)