Q1.社員10人いると就業規則作成は義務ですか?

又、就業規則を作成したり、随時見直したりしなければならないのはなぜですか?

A 就業規則は労働基準法第89条で従業員が10名以上いる会社は作成、労働基準監督署に届け出しなければなりません。又、1つの会社に別の拠点がある場合は事業場ごとに10人以上いればそれぞれ提出をしなければなりません。この10人には常用の人であればパート、アルバイトも対象人数となります。

しかしもし、10人いなくとも就業規則は必要になります。雇用契約書だけでは伝えきれないことが多くあり、1人でも就業規則を定めておきたいという会社も多くあります。

就業規則の目的は「就業の実態を改善してゆく事」にあり、本質は労務管理をきちんと行う事にあるからです。

就業規則をうまく活用して守らなければならないことをだけでなく会社の方針や、積極的に行ってほしいこと、やりがいにつながる制度など社員に伝わる様にするためです。

さらに法律改正や世の中の慣行などで色々な制度運用も変化してくるのでその内容に沿ったものにしておかないと時代遅れでは法違反や使い物にならなくなってしまうからです。

 

Q2.就業規則は労使トラブルを回避するのでしょうか?

A労使トラブルは年々増えており労働局への労働相談は昨年も110万件を超えており10年以上連続して100万件を超えています。このような状況の中で会社を守るためにも就業規則を定めていればトラブルに対応が出来、大きな問題に発展しないで解決することも多々あります。ですから就業規則が労務リスクから会社を守ってくれます。

その役割は重要になっているのです。

 

Q3.会社を守る就業規則とは何ですか?

A 直接的な生産活動を本業として収益を上げている中小企業では人材活用の重要性は大企業と比較にならないほど高く仕事の密度、効率、生産性等すべては人の問題と言っても過言ではありません。そのため一部の問題社員等が経営や資金繰りに重大な影響を及ぼすことが多々あります。現在の法律では問題のある人をすぐ解雇にしたり、給与を一方的に下げたりはしにくい状況です。社内の秩序維持や処遇について事業主の裁量が無いわけではありませんが就業規則を定めておくことで会社と社員の約束事が明確になりそれらが誠実に運営できればトラブル回避ができるのです。

社員にとって職場のルールブックであり、会社にとって経営のスムーズな運営、経営力のアップのルールブックと言えます。

 

Q4.会社のルールが適当であるとトラブルを起こす?

A 最近は手元のスマホのインターネットで簡単に情報が引き出せます。ですから働き方のルールがないと勝手に解釈したり、訴えたりしてきます。残業問題などはもっともたるものです。多様な働き方の社員が増えそれぞれの立場が違うのに同じルールが適用できることばかりではありません。

会社の立場は統一ルールを作らないと会社としてのまとまりが無く生産性も上がりません。

「会社が縛られてしまうと思う」「社員にできる限り見せたくない」という考えでの就業規則では労使トラブルは減りません。会社は様々な働き方をする人たちを組織して、一定の秩序の下で運営発展をしていきます。

 

Q5. 会社を守る就業規則が必要なわけは?

A 就業規則は会社の規範を示すことです。社員の働き方はもとより上司や事業主の指揮命令の出し方まで規定する事で社員も安心して勤務できるようになります。関係法令に基づき作成した就業規則は会社にも法令遵守義務があります。会社もルールに拘束はされますが、就業規則が必要なことはまず会社が不利とならないリスク回避をすることです。そのことで社員も事業主も守るべきルールの下、同じ方向を向いて働いてこそ経営推進力が発揮されるでしょう。

 

しかし就業規則はリスク回避の面ばかりでなく福利厚生制度を導入したり労働時間や休暇を改善したりモチベーションを上げる賃金制度を入れたり都度見直していきながら運用することが大事です。

中小企業だからこそ、社員の働き方、働く目的を明確にして働く上でのルールを整備していかなければならないのです。

 

Q6.就業規則の記載事項の決まりは?

A 就業規則は労働基準法で記載すべき事項が定められています。

就業規則に定める事項は大きく3つに分かれています。

  • 必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)

・始業、就業時刻

・休憩時間

・休日

・休暇

・賃金

・退職

  • 会社に定めがあれば記載する事項(相対的記載事項)

・退職手当

・臨時も賃金など

・その他の負担(食費や社宅費等)

・安全及び衛生

・職業訓練

・災害補償及び業務外の傷病扶助

・表彰及び制裁

  • 任意的記載事項(記載した以上守るべきもの)

・就業規則は法令に違反するものでなければ記載しても構いません。

会社の理念、相互扶助の精神、労使協調社会貢献等仕事への取り組みや会社生活の心得のようなことです。前文や目的に記載したり規則と別に規定しているところもあります。就業規則の変更手続き改正履歴も本則と付則にいれておくとより規則の内容が明確になります。

 

Q7. 就業規則の内容は何を入れるのがよいでしょう。

前Q6にある必要事項が入っていればどのような構成であってもよいですが

例として分かりやすい流れとしては下記のようなものになります。

前文、社員の定義、採用手続、入社手続、異動、労働時間、休日、休暇、休職、退職、服務規程、表彰懲戒、給与賞与、退職金、育児介護、災害補償 他

 

Q8.就業規則の役割は?

A 就業規則は会社の労務リスクを減らすことが目的だけでなく会社の就業上の労務管理に関することが載っているので働く上でのルールブックとなります。ですから形式的に作成しても実態にあった規定にしておかないと運用ができません。会社の人事ルールや法律も絶えず変化します。この変化に対応したものでないと規則は有効に機能しないでしょう。

守るべきルールを記載し、メンテナンスをしておくと「ルールブック」として使えるものになるのです。そして些細なトラブルが大きな問題になる前に紛争を未然に防ぐことができるのです。

このように就業規則には法を守りながらも明文化し社員にルールを浸透させること、労務リスクを防ぐ面と社員が働き甲斐を感じられるような人事制度作りも進められるのです。

Q9.モデル就業規則をそのまま自社に使ってもいいか?

A モデル就業規則は自社の実態は踏まえてないのでそのままでは使えないものです。モデルと実態との違いがよく分かっていないと条文の整合性などに問題が生じやすいです。モデルは一般的には労働者保護の観点が優先しています。その内容が法律上合っていても自社とは違う場合はコンプライアンスに基づき法律をクリアしつつ現状にあったものに修正するのがよいでしょう。自社の仕事内容、勤務形態、労働時間、賃金や退職金などモデルがそのままという事はないと思います。少なくとも次に示すものは自社用に変更する必要があるでしょう。

その規則を適用する社員

就業形態による労働時間

就業状態による給与体系の違い

賞与の支払いについて

退職金について

就業形態による服務規律について

Q10. 就業規則の内容不備、未作成が引き起こすリスクは

A 就業規則に不備があろうが未作成でも社員の日常には関係ないように見えます。

事業主も社員が決まった時間に出勤し決まった業務を滞りなくしてくれればわざわざ規則など必要無いように見えます。しかし労使が納得していれば問題点が無いという事ではなく法律の適用もあります。口約束で言ったことが現実のトラブルになる事があり「言った」、「言わない」と争いの種になる事があります。雇用契約書はもちろん必要ですが、問題は後から生じるので事前に予測できる予防や教育目的の為細かい規定をしておくことが必要でしょう。

最近の事業主の労務管理の悩みは若手社員の人間性に戸惑う事があることです。労働法なども事業主より知っている場合があります。痛いところを突かれるような労務管理の不備は気をつけておかなくてはなりません。

労務リスクには次のようなことがあります。

・社員が引き起こす不祥事や情報漏えい、人材流失、

・残業代未払いや、社会保険未加入

・ハラスメントによる訴え、訴訟

・加重労働による心身の健康被害

・インターネットの風評被害などのイメージダウン

・労働法違反による業務停止命令

このようなことから会社を守るためにも就業規則は無くてはならないでしょう。

 

Q11.就業規則の作成、変更、届出、周知の流れはどのようになりますか?

就業規則作成を考えた時から手続き完了まで

  • なぜ作るのか

就業規則を作成したい、あるいは作成しなければならない理由は会社によって様々です。その理由によってかける時間や、内容やボリューム、社員への説明など取り組み方法も違ってきます。監督署の是正指導があったので早急に対応が必要、助成金を申請するのに就業規則が必要な時も期限がある場合が多いです。一番多いのは法的に社員数が提出規模となったり、社内規定の整備で自社の労務管理の質を向上させる目的で作成することでしょう。

  • 変更の必要性

法改正への対応・・・ 新法施行(最近は働き方改革法が施行されましたね)への対応で変更するのが多いケースです。高齢者継続雇用や育児介護休業等直ちに適用する社員がいない場合でも法改正には対応しておかなくてはなりません。

定期的な見直し・・・労使トラブルが少ないところではいったん作成すると放置状態になる事があり、いつの間にか現実と遊離してしまっていることがあります。

トラブル対応・・・既定の不備や不整合、条文解釈の相違など労使トラブルを防止できなかったり、問題となる人を懲戒できなかったりと運用上の都合から改定する必要が生じます。

  • 就業規則の届け出

届け出自身は就業規則に変更届と意見書を添付して管轄の労働基準基準監督署に

届け出をします。1つの会社で複数の営業所や工場などがあるときは規則の内容が同じなら本社管轄の監督署に一括で出すこともできます。意見書については各事業所ごとの作成が必要です。

  • 各種協定の届出

就業規則の内容をより詳細に、適正に施行するために別途労使協定を締結しなければならない場合があります。時間外休日労働、(36協定)、変形労働時間制、裁量労働、年次有給休暇計画的付与、賃金から法定外の項目を控除、育児介護休業に関する協定等で届出義務のあるものは監督署に届出をし、社内で保管でよい協定は保管します。

Q12. 就業規則作成届出手続きの流れは?

就業規則作成の手順を見てみましょう。大雑把に言うと次のようになります。

現状把握→資料最新情報の収集→現状と法改正等新情報等の検討→試案の作成検討会検討会→原案の作成→検討会→意見の聴取→労働基準監督署へ届出→労働者へ周知・説明会など

Q13. 作成手順をもう少し詳しく見てみてみましょう

  • 現状把握・・ 就業規則を作成するにあたり事前準備として職場の現状を把握しておく必要があります。現状把握しないで他の会社の引用等で作成しても実態にそぐわないものになってしまいトラブルの原因にもなりかねません。現状把握しておく内容は少なくとも ア、賃金、労働時間、休日休暇などの労働条件に関する事 イ、採用や退職に関する事、ウ、退職金や賞与に関する事 エ、服務規律に関する事等がメインになります。

就業規則は特段の定めがない限り正社員もパートタイマーも同一の就業規則が適用されますので異なる労働条件を定めるのであれば予め職種別に作成するか個別の契約書等で書き出しておくのがよいでしょう。

  • 資料・情報の収集・・

就業規則作成に必要な法律知識や改正情報、一般的な水準について情報を収集します。労働基準法などで定める労働条件は最低限の基準を示したものですから就業規則作成に当たっては世間一般の水準や会社の実情を考慮して考えます。東京都のTOKYOはたらくネットでは東京都下の労働条件の実態調査を公表しています。

  • 試案の作成・・ 収集した情報や資料を基に就業規則の試案を作ります。この段階が一番手のかかるところです。前にも述べましたが就業規則には必ず記載しなければならない絶対的記載事項と制度化するなら記載しなければならない相対的記載事項を定めています。それらの時効を明らかにし記載漏れ、法違反、会社の実情と会っているか等検討します。

服務規定は解雇事項にも該当することもあり、列挙が必要ではありますが、あまり細かすぎることはあるいは労働者を信用しないような規定で信頼関係が否定的にならないような書き方の工夫が必要でしょう。懲罰的なことばかりでなく働き甲斐につながる制度なども考えてみてはどうでしょうか。全体に言えることですが内容はできる限り抽象的でなく具体的なものがよいでしょう。

  • 原案の作成・・ 検討した試案を条文の形にまとめます。就業規則は事業主が作成しますがこの段階で可能なら労働者の意見を取り入れ、反映させることもよいでしょう。人数にもよりますがアンケートなども考えられます。
  • 意見の聴取・・ 就業規則を作成する時、変更する時は労働者の過半数を代表する労働者からの意見を訊かなくてはなりません。提出時には意見書を添付しなくてはなりません。
  • 労働基準監督署長への届出・・事業主は労働者からの意見書と代表者の署名押印のある届書を就業規則に添付して所轄の労働基準監督署に届け出をします。労働者10名以上の事業場は届出義務はありますが、10名未満でも届出をしておいてもよいでしょう。
  • 労働者への周知・・就業規則を届け出したら労働者全員に周知しなければなりません。就業規則は1人1人に渡してもよいですが最近はWEBで確認できるようにすると言うところも増えました。事業所の見やすい場所に掲示するように備え付けておく等の方法でも構いません。いずれにせよ事業主の机の中にあり、見ることができない状態は好ましくありません。
  • 運用・・実際に就業規則を使う場面では労使ともに規則を遵守することで信頼関係が築かれ安心して働ける環境を作っていかれるでしょう。就業規則は助成金申請にも必要です。労働者1人の会社でも作成しておいてもよいでしょう。そして随時見直しが必要です。それでこそ規則を活用するという事でしょう。

Q14.意見書の意見の聴取とは誰にするのがよいですか?

事業主は就業規則を作成する時、あるいは変更する時には労働者から意見を聴かなければなりません。労働基準法では意見を訊くべき相手方である「労働者側」について次のように示しています。

  • その事業上に過半数の労働者が加入している労働組合があるときはその労度組合から意見を聴く。
  • その事業上に労働組合が無いときには又は労働者の過半数が加入している労働組合が無いときにはその事業場の労働者の過半数を代表する者に聴く。

つまり多くの中小企業は労働組合を組織している事は少ないので労働者の過半数を代表する者となります。

  • 意見を聴くというのは事業主が労働者側の意見を求めるという事であり労働者の意見を採用したり、労働者の意見を反映させなければいけないという事ではありません。しかし単に形式的に意見を求めればよいと言うのでなく意見を述べる時間的余裕も必要でしょう。もし意見が出た時には会社側は意見を参考に再考することは必要でしょう。

Q15.事業場の過半数を代表する者の選び方

「事業場の過半数を代表する者」の選び方についてはア、管理・監督の地位にない者 イ、投票や挙手など民主的な方法によって、過半数の労働者の指示を得たもの、のいずれにも当てはまるものから選出するようにします。

選出方法としてふさわしくないものは

  • 使用者が一方的に指名する方法
  • 親睦会の代表者を自動的に労働者代表とする方法
  • 一定の役職者を自動的に労働者代表とする方法
  • 一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出する方法

事業場全体の労働条件などについて管理する立場(人事労務部長、課長など)は管理監督者に当たるとされていますので労働者代表にはふさわしくないでしょう。

Q16.就業規則変更手続きで労働条件を変えるときの注意点は?

変更の必要性や内容について十分説明をする必要はありますが、不利益変更の場合は労働契約法で変更の度合いが制限されています。労働条件を引き下げる時は原則として労働者の同意が必要です。しかし例外的に次の要件を満たすときは同意を必要としません。

  • 終業規則の変更が合理的であるもの

就業規則変更の合理性は以下の要素を総合考慮して判断されます。

  • 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
  • 労働条件変更の必要性の内容・程度
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 労働組合との交渉の状況
  • その他、就業規則の変更にかかる事情
  • 変更後の就業規則を郎等者に周知する事