インボイス制度で免税事業者が課税事業者に誘導される理由を消費税の制度面から考えてみます。

消費税の仕組み

消費税は、事業者が国内で行った課税資産の譲渡、貸付、役務の提供(課税資産の譲渡等)について課され、事業者は売上に係る消費税額から仕入れに係る消費税額(資産の取得に係る消費税を含む)を控除し、差額を納付する(還付を受ける)制度です。

消費税制度は、消費に広く公平に課税すること、簡素でわかりやすく、事務負担が軽減されるよう配慮されています。それぞれ取引の前段階で課税された仕入税額を控除することにより、税の累積がされないよう設計されています。

事務負担への配慮と帳簿方式の課題

事業者の事務負担の軽減措置は、小規模事業者の免税点制度、帳簿方式の税額控除制度、簡易課税制度の3つです。

免税事業者は、売上に係る消費税の納税義務が免除されますが、仕入れに係る消費税額の控除も認められません。帳簿方式では、事業者は帳簿の記帳内容から売上に係る税額と仕入控除税額を計算することができ、また簡易課税制度を選択し、みなし仕入率を使用して簡易な計算もできます。

一方、現状の帳簿方式には課題もあります。課税事業者は、仕入先が課税事業者か免税事業者かを判断できないため、仕入先が免税事業者であっても仕入税額控除が認められます。仕入先では請求した消費税は益税になります。また簡易課税制度でも、みなし仕入率の適用により益税が生じることがあります。益税は支払側の不信感を生みます。そのほか帳簿の正確性が担保されなければ、誤りや課税漏れも生じます。

免税点制度を閉ざすインボイス制度

令和5年10月から課税事業者は、インボイスを介して消費税を授受します。インボイス保存が仕入税額控除の要件となり、インボイスを交付できない免税事業者は取引先からはずされていくことでしょう。

免税点制度でこれまで守られてきた負担軽減措置は、インボイス制度のもとで実質閉ざされることになります。免税事業者の多くは、課税事業者となったうえでインボイス登録事業者を選択し、併せて事務負担が少なく、益税の余地が残される簡易課税制度を選択することになるでしょう。そのほか、電子インボイスによる事務負担の軽減も期待されます。

 

※株式会社エムエムアイが運営する当事務所所属のデイリーコラムより抜粋。所属士業の先生方が執筆しています。(リンク)

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免税事業者であった基準期間の課税売上高に消費税は含まれないとした判例

(東京地裁 平成11年1月29日判決 東京高裁 平成12年1月13日判決 最高裁 平成17年2月1日判決)

消費税の納税義務判定にあたり、基準期間において免税事業者であった事業者が、基準期間の売上総額から消費税相当額を控除できるかが争われた。

平成12年東京高裁は、「消費税法9条1項(小規模事業者に係る納税義務の免除)」の「免除」とは、いったん発生した義務を課税期間経過後、事後的に意思表示その他の行為により消滅させるという意味ではなく、法が定める要件を満たす場合には、法律上当然に納税義務は発生しないという意味で使用しているものである。」と判示した。

平成17年最高裁は、高裁判決を支持し、「消費税に相当する額を転嫁すべき立場にない免税事業者については、消費税相当額を控除することは法の予定しないところというべきである」として認めず、「課税資産の譲渡等の対価の額に含まないものとされる「課されるべき消費税に相当する額」とは、基準期間に当たる課税期間について事業者に現実に課されることとなる消費税の額をいい、事業者が9条1項に該当するとして納税義務を免除される消費税の額を含まないと解するのが相当である。」と判示した。

また、「軽減税率QA111(免税事業者が発行する請求書に係る記載事項)」にも、「なお、免税事業者は、取引に課される消費税がないことから請求書等に「消費税額等」を表示して別途、消費税相当額を受け取るといったことは消費税の仕組み上、予定されていません。」と案内されている。

国税庁 消費税の軽減税率制度に関するQ&A

(個別事例編)令和2年9月改訂

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_03.htm

 

消費税法  第5条(納税義務者)

事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第30条第2項及び第32条を除き、以下同じ。)及び特定課税仕入れ(課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。以下同じ。)につき、この法律により、消費税を納める義務がある

第9条 (小規模事業者に係る納税義務の免除)

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については第5条第1項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

第28条(課税標準)

課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。)とする。(以下省略)

第57条の5(適格請求書類似書類等の交付の禁止)R5.10.1施行

適格請求書発行事業者以外の者は第一号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第1号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)を、適格請求書発行事業者は第二号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第二号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)をそれぞれ他の者に交付し、又は提供してはならない。

一 適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡

易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類

二 偽りの記載をした適格請求書又は適格簡易請求書

三 第一号に掲げる書類の記載事項又は前号に掲げる書類の

記載事項に係る電磁的記録