生命保険に加入すると、保険金の受取人を指定しますが、いざ被保険者が死亡した時、保険金を渡したい人が当初から変わってしまっているときもあります。そのような場合、課税関係はどうなるのでしょうか。

両親から妻や子への名義変更

社会人になって初めて生命保険に加入するとき、保険金の受取人に自身の両親を指定することが少なくありませんが、その後、結婚して子供が生まれ、家族ができてからも保険金受取人の変更手続きをせずに親の名義のままとなっている場合があります。

しかし、自身が病気や不慮の事故で死亡してしまったとき、残された家族の生計を支えていくことを思えば、保険金の受取人は妻や子になってほしいところです。

受取人名義変更の課税関係

相続では保険金受取人は、保険契約上の受取人となりますが、保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合、保険金受取人の変更手続きがなされていなかったことについて、やむをえない事情があるなど相当の理由があると認められるときは、実際に保険金を受け取った者を保険金受取人とする取扱いがあります。

契約上の保険金受取人である両親も妻や子を保険金受取人とすることを望み、やむを得ない事情があると認められれば、妻や子のみなし相続財産として課税対象となり、また、相続人となるので非課税措置の適用を受けることもできます。

なお、生命保険金の受取人名義を変更した時点では課税関係は生じません。被相続人が自身を被保険者とし、保険料を負担している場合は、保険事故(被保険者の死亡)が発生して保険金の受取りが確定したときに課税関係が生じます。

離婚した元妻からの名義変更

ところで妻を受取人とする生命保険に加入していた夫が、離婚しても受取人名義を元妻のまま変更せずに死亡してしまったら、どうなるでしょうか。この場合、元妻は離婚しても保険金受取人の地位を失わないため、生命保険金は元妻に支払われ、みなし相続財産として課税対象となります。そして元妻は相続人ではないので生命保険金の非課税措置の適用は受けられません。

離婚するときは、財産分与とあわせて、生命保険金受取人の名義変更についても忘れないようにしましょう。

 

※株式会社エムエムアイが運営する当事務所所属のデイリーコラムより抜粋。所属士業の先生方が執筆しています。(リンク)

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相続税法基本通達

3-11  「保険金受取人」の意義

法第3条第1項第1号に規定する「保険金受取人」とは、その保険契約に係る保険約款等の規定に基づいて保険事故の発生により保険金を受け取る権利を有する者をいうものとする。

3-12  保険金受取人の実質判定

保険契約上の保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合において、保険金受取人の変更の手続がなされていなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合など、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することについて相当な理由があると認められるときは、3-11にかかわらず、その者を法第3条第1項第1号に規定する保険金受取人とするものとする。

TAINS 相続税相談事例000237

保険金受取人の実質判定

〔問〕この度、夫が死亡し保険会社から保険金が支払われることになった。この保険金は、夫が独身時代に夫の母を保険金受取人とする生命保険契約を締結したもので、結婚後保険金受取人を変更しないままになっていた。母は、その保険金を受け取らず、配偶者の私と子供2人が受け取った。この場合、私たちが受け取った保険金について、夫の保険金受取人として相続税の申告をすることができるか。

〔答〕夫の法定相続人である配偶者及び子供が、保険金を受け取るべきものであったとする相当な理由があるようなときは、保険契約上の保険金受取人ではなく、現実に保険金を取得した者を保険金受取人とすることができる。

相続又は遺贈により取得したものとみなされる生命保険金の「保険金受取人」とは、その保険契約に係る保険約款等の規定に基づいて保険事故の発生により保険金を受け取る権利を有する者をいうものとして取り扱われる。

しかし、保険金受取人の判定は、事実関係を具体的に勘案して実質的に判定することが必要であり、本問のような場合には、次のように取り扱われる。〔相基通3-12〕

保険契約上の保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合において、保険金受取人の変更の手続がなされていなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合など、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することについて相当な理由があると認められるときは、相続税法基本通達3-11にかかわらず、その者を相続税法第3条第1項第1号に規定する保険金受取人とするものとする。

したがって、本問のような事例や、被相続人が取引先に対する債務の担保として、取引先を保険金受取人とする生命保険契約を締結していた場合において、被相続人の死亡によって保険会社から支払われた保険金が取引先に対する債務に充当され、その債務の金額を超える部分の金額については被相続人の相続人が受け取ったときにおいて、保険会社から支払われた保険金は相続税法第3条第1項第1号に規定する保険金として相続人が受け取ったものとし、取引先に対する債務は相続税法第13条に規定する債務控除の対象となる債務として相続税の申告があったようなときが、これに該当する。

最高裁 昭和58年9月8日判決

離婚した元妻に生命保険金受取人の地位を認めた判例

被相続人を被保険者とする生命保険契約について、保険金受取人である離婚した元妻が保険金請求権を有しないことの確認を求める裁判で、最高裁は、保険契約者が保険金受取人の地位を失わせる意思を保険契約に定めるところに従い、保険金受取人の変更手続きによって保険者に対して表示しない限り、元妻は、被保険者の離婚によって保険金受取人の地位を失うものではないと判示した。