コロナ禍の下、自転車通勤が増えています。自転車通勤は手軽に始められますが、通勤中に事故でケガをした場合、通勤災害になるのか、または、相手にケガをさせてしまう場合の損害賠償はどうなるのか? 自転車通勤を認める場合は、様々な状況を考慮して規程などルールを定めておくことが大切です。

通勤災害とは

通勤途上の事故の場合、通勤災害か否かが問われます。通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、傷害又は死亡を言います。しかし、どんな場合でも通勤災害になる、というわけではなく、労災法では「通勤」とは「就業に関して」次の3点で定義しています。

  • 住居と就業場所との間の往復
  • 複数の異なる事業場で働く労働者が一つ目の事業所から次の事業所へ移動する場合
  • ①、②の往復の前後に、厚生労働省で定める要件に該当する場所への立ち寄りは可

③は、転任に伴い家族と別居していて、家族の住居から事業所に行く場合や、要介護状態の父母や親族の介護のために自宅でないところからの通勤などです。通勤の途中で、買い物など日常生活に必要な行為、やむを得ない事由による立ち寄りは、その行為の間(逸脱、中断といいます)は除き、通勤となります。ちなみに、通勤途中で会社の荷物を届けるような場合は、通勤災害ではなく業務災害となり別途対応が必要となります。

 

自転車損害賠償責任保険への加入

自転車でのケガを防ぐために、必ずヘルメットの着用を義務付ける、前照灯やベルなど安全にかかわる装備が正しく装着されていて、整備された自転車であること、安全な乗り方は当然として、駐輪場の確保なども確認が必要です。そして、何より、自転車損害賠償責任保険等に加入していることの確認が重要です。昨今の自転車事故の多発と裁判での高額な賠償金の支払い命令が出ていることで、多くの自治体が条例で自転車保険加入を義務化しています。自動車保険特約加入も含め、書類の提出などで保険加入を確認しましょう。

 

※株式会社エムエムアイが運営する当事務所所属のデイリーコラムより抜粋。所属士業の先生方が執筆しています。(リンク)

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神戸地裁:小学生の自転車事故 母親に賠償命令

自転車事故による損害賠償は、神戸の小学生が起こした事故に対して、2013年に神戸地裁で9,500万円の支払命令が出たことで大きな話題となり、自転車事故のために損害賠償保険の加入が必要と世の中への警鐘となりました。(神戸新聞記事2013.7.5より抜粋)

https://www.kobe-np.co.jp/news/backnumber/201511/0011512917.shtml

通勤災害の保険給付

「通勤災害」の保険給付は、労働者災害補償保険法第7条第1項第3号に規定され、「通勤」の定義は、同条第2項に規定されています。(厚生労働省 東京労働局HP「通勤災害について」より抜粋)

「通勤」とは、就業に関し、次に掲げる移動、
(1)住居就業の場所との間の往復
(2)就業の場所から他の就業の場所への移動
(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き「通勤」となります。(同条第3項)

このように通勤災害とされるためには、その前提とし

て労働者の就業に関する移動が労災保険法における通

勤の要件を満たしている必要があります。

 

自転車通勤導入に関する手引き」について

昨今、環境負荷の低減や健康維持増進等様々な理由で通勤手段として自転車の利用が推奨されています。「自転車活用推進官民連携協議会」が、令和元年5月に「自転車通勤導入に関する手引き」を策定しています。自転車通勤制度を導入するにあたり、注意すべきことなどとともに、自転車通勤規程のひな型も掲載されています。

導入時の検討事項として次の4点が掲げられています。

  • 異なる通勤経路や交通手段などを認める制度設計
  • 事故時の責任や労災認定の明確化とリスク対応
  • 自転車通勤手当の設定
  • 必要な施設の整備(駐輪場など)

通勤時に従業員が他人を死傷させた場合や他人の物を壊した場合に発生した対人・対物賠償責任は従業員自身が負いますが、事業活動中の事故であると認められた場合、事業者の使用者責任が問われ損害賠償責任を負うことになります。そのため、従業員だけでなく、事業者も損害賠償責任に備え、対人・対物への損害賠償を補填する「自転車損害賠償責任保険等」への加入が必要となり、賠償額として1億円以上が望ましいとされています。

(「自転車通勤導入に関する手引き」令和元年5月 自転車活用推進官民連携協議会HPより抜粋)

 

自治体による自転車損害賠償保険の加入義務化

多くの自治体が条例で自転車損害賠償保険加入の義務化を規定しています。

※ 東京都では、令和2年4月1日から都内で自転車を利用する場合には、対人賠償事故に備える保険等に加入している必要があります。

自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等|東京都都民安全推進本部 (tokyo.lg.jp)

※ 大阪府では、平成28年4月から大阪府自転車条例を定め、自転車利用における安全確保、自転車損害賠償保険等の加入などを義務化しています。

http://www.pref.osaka.lg.jp/dorokankyo/osakajitensha/

※ 福岡県では、令和2年4月1日に福岡県自転車条例を施行し、10月1日より条例を改正して自転車損害賠償保険の加入を義務化しています。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/bicycle-insurance.html